デジタル遺産てなんですか?相続できるのですか?

閑話休題

デジタル遺産の定義

最近よく耳にする「デジタル遺産」とか「デジタル遺品」という言葉ですが、法律上の厳密な定義は実はありません。ただし、民法に定める「動産」というのは、有体物をさすと解釈されていますので、被相続人が所有していたパソコンやスマホやモバイル端末機器類の本体それ自体は、その所有権が相続の対象になるものと考えられます。

問題は、パソコン等の中に格納されている各種のデータファイル(オフライン遺産)や、インターネットを通じて利用していたアカウントサービス・ID・パスワード等(オンライン遺産)は有体物なのかという命題にぶち当たることです。

したがって、オフライン遺産については、それを格納しているパソコン等の有体物を遺産分割協議等によって取得した相続人がデータも併せて承継できると考えるのが素直です。(もっとも、パソコンを起動させるためのパスワードやPINが分からなければ、これを復旧するのは大変ですが。)

デジタル遺産は相続できるのか

では、オンライン遺産も同様に、被相続人の財産に属した権利義務であるとして遺産分割の対象にすればよいかというと、これはそう簡単ではなく、民法第896条ただし書きにあるように、「一身に専属したもの」は相続の対象とはなり得ません。ここでよく思い出していただきたいことがあります。オンライン遺産としてのアカウントサービスというのは、そのインターネット上のサービスや役務を提供する事業者と被相続人との間の利用契約の締結によって生じたものであると考えられることです。

多くのインターネットサービス事業者の契約約款や利用規約には、アカウントサービス利用権が受益者である被相続人に一身専属的に帰属するものと定められており、さらにこの利用権は、第三者に譲渡・貸与その他の処分または相続させることができない旨も多く明記されています。このあたりは、約款や規約に明記されていないからといって、アカウントも相続できるはずだと主張しても、事業者側は相続を認めない場合が多いのも事実です。

このようなオンライン遺産の相続手続きを行うに際しては、事業者側へあらかじめ確認することが現状においては肝要かと思われます。私が最近懸念しているのは、いわゆるサブスクリプション契約と呼ばれるもので、一定の期間ごとにサービス利用の対価が被相続人の銀行口座等から継続的に自動引き落としされることになっていて、少なくとも事業者側が被相続人の死亡を知らない限り、いつまでも凍結を免れた口座からは引き落とされてしまうという弊害が生じていることです。(私もサブスク契約を利用することはありますが、期間満了時に自動更新とはせずに、面倒ですが必ず自分の意思で更新手続きを行うことにしています。)

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