過料の手続きはどのようになされるのか

解説記事

相続登記の義務化にあたって、義務違反の場合の過料手続きも定められました。大きな流れとしては、登記官から申請義務者への相当期間を定めた【申請の催告】と、それにもかかわらず期間内に申請されなかった場合の登記官から管轄地方裁判所への【過料通知】という2段階の手続きを経ることになっています。

ここでは、令和5年9月12日付法務省民二第927号民事局長通達に則して、過料手続きについて記述します。(※太字は、筆者。)

裁判所への過料通知

登記官は、改正不登法第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務に違反して改正不登法第164条の規定により過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、これらの申請義務に違反した者に対し相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告(以下、【申請の催告】という。)し、それにもかかわらず、その期間内にその申請がされないときに限り、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を通知(以下、【過料通知】という。)しなければならないこととされました。(改正不動産登記規則第187条第1号)

申請の催告は、書留郵便又は信書便の役務であって信書便事業者において引受け及び配達の記録を行う方法(申請義務に違反した者が外国に住所を有する場合にあっては、これらに準ずる方法を含む。)により、別記第1号様式の催告書を送付してするものとし、当該催告において定めた期限内に登記の申請がされた場合又は当該催告の後に【正当な理由】がある旨の申告がされ、登記官において後記[登記官による正当な理由の確認]のとおり確認した結果、【正当な理由】があると認めた場合には、過料通知を行わない。

過料通知は、別記第2号様式の通知書に関係書類を添えて行うものとし、過料通知をした場合には、不動産登記事務取扱準則第117条の規定に基づき、各種通知簿(同準則第18条第6号)に所定の事項を記載するものとする。

登記官が申請の催告を行う端緒

登記官は、次に掲げるいずれかの事由を端緒として、改正不登法第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、【申請の催告】を行うものとする。


①相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき

②相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき

登記官による正当な理由の確認

上記【正当な理由】の有無についての判断は、別記第1号様式の催告書において、【正当な理由】がある場合にはその具体的な事情を申告するよう求めた上で、当該申告内容その他一切の事情を総合的に考慮して行うものとする。

なお、相続登記等の申請義務の履行期間内において、次の①から⑤までのような事情が認められる場合には、それをもって一般に【正当な理由】があると認められる。もっとも、これらに該当しない場合においても、個別の事案における具体的な事情に応じ、申請をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には、【正当な理由】があると認めて差し支えない。


①相続登記等の申請義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

②相続登記等の申請義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合

③相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合

④相続登記等の申請義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

⑤相続登記等の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合


【申請催告書】・【過料通知書】の様式は次のとおりです

別記第1号様式の催告書(表面)

別記第1号様式の催告書(裏面)


別記第2号様式の通知書(表面)

別記第2号様式の通知書(裏面)

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